キリノート

get the best of both worlds

読んでみた『「その他の外国語文学」の翻訳者』白水社、2022年。

日本におけるマイナー言語の翻訳者たちの半生のエピソードを集めた本。書名にもなっている「その他の外国語文学」が、Amazonのカテゴリー名から来ているとは思わず、センスがいいなぁと。

出てくる言語は、マヤ語とか、チェコ語とか、確かにマイナーだなぁと思うものが多い。

その中に出てくるポルトガル語なんて、世界的に見ればメジャーな言語だと思うけど、日本のAmazonだと「その他」に入れられてしまうんだね。ポルトガルポルトガル語を「ポルポル」、ブラジルのポルトガル語を「ブラポル」と呼ぶとはしらず、つい微笑む。

そんななか、読んでいると、ふと自分を顧みてしまうような言語もある。

ベンガル語は、バングラデシュの国語か。そういえばイギリスで1年間一緒にハウスシェアしたバングラデシュ人の彼は、その後イギリスで就職して定住したと思うけど、元気かなぁ。卒業後に1回だけ会いにいったな。

バスク語の翻訳者である金子奈美さんの、大学の専攻としてはスペイン語だったけど、どこかスペイン語にしっくりこず、そんな中で偶然出会ったバスク語にピッタリ来て、という感覚が面白い。僕は翻訳者でもなく言語に堪能なわけでもないけど、スペインとバスクという関係を、英語(イングランド)とスコットランドや、英語とウェールズといった関係に置き換えてみると、後者にしっくりくるという感覚が、なんだかわかるような気がする。スコットランドアクセントの英語を聞くと、なんだか実家に帰ってきたような暖かい気持ちになる(わかるとは言ってない)。それをいうなら自分もスコッツ語やスコットランドゲール語を勉強しろよという感じだが、そこまで語学にハマれないんだよなぁ。

この本、もともとは白水社のウェブに掲載されていたオンライン連載みたい。その辺の絶妙な軽さもいい感じで、読みやすいです。

追伸、大学業界の話。翻訳者、東京外国語大学の関係者が多い、多い、多い。驚く、というか、やはりそうなのか、というべきなのか。さすがですね。